製品案内
コンクリート検査装置
現場で結果が分かる
本機は塩害環境下にあるコンクリート構造物中の塩化物イオン濃度を、近赤外分光法を用いて、その場で簡単に短時間*で測定する装置です。
※従来法であるJCI法やJIS法では薬品を使用した化学分析を専門の分析機関等で行いますが、サンプル採取から結果が得られるまでに1週間ほどの期間が必要です。
〔 特 長 〕
●その場で測定結果が得られる「現地測定システム」
・試料の分光スペクトルを用いてその場で分析できます。
・装置制御からデータ処理までミニノート型PCでOKです。
・電源(AC100V)のない場所でも、専用ポータブル電源で対応できます。
●明るい分光器を採用。高い分解能による分離のよいデータが得られます。
〔 用 途 〕
●塩害環境下にあるコンクリート構造物中の塩化物イオン濃度測定
〔 近赤外対応ファイバーユニット (標準付属品)〕
分岐比を最適化した2分岐型近赤外対応ファイバーを使用します。試料側プローブには、
試料面との間隔を調整し、ファイバー端面を保護するアジャスターが付いています。
主な仕様 SCl System ※本仕様は予告なく変更することがあります。(2009年4月現在)
測定波長範囲 | 1350~2500nm |
分解能 | 7nm |
波長精度 | 1nm |
リアルタイム測定範囲 | 380nm |
分光器 | ツエルニーターナー型 |
分光器明るさ | F/3.2 |
検出器 | InGaAsリニアイメージセンサ(2段電子冷却型) |
光源 | 高輝度ハロゲンランプ(色温度3000K) |
制御及びデータ処理用PC | ミニノート型PC OS:WindowsXP (USB端子2箇使用) |
ファイバーユニット | プローブ側 :外径6.3mm/ファイバー径3mm ファイバー長:2m 開口数:0.2 保護外装:ステンレス製フレキシブル管 |
装置サイズ及び重量 | 約450(H)×160(W)×360(D)(突起含まず)、約14kg |
電源・消費電力 | AC100V 50/60Hz 、200W(ミニノートPC含む:最大) |
高度成長期に建設された橋梁等、数多くの社会資本は所定の耐用年数が経過し、まもなく更新期を向かえることとなります。
しかしながら我が国の社会経済情勢を考えた場合、可能な限り更新費用を軽減する必要があり、この対応策として施設の長寿命化を図ることが強く求められています。
これら多くの施設の長寿命化を図り適切に維持するためには、現状の劣化状態を把握して適切な予防保全対策を施す必要があります。現在、塩害劣化したコンクリート構造物中の劣化指標となる塩分濃度測定は、実構造物から試料を採取して実験室に持ち帰り、JIS法にしたがって薬品を使用する化学分析により行っていますが、これらに多くの労力と時間を要しています。これに対して近赤外分光法を用いて複数の特定波長域の吸光度を測定することによって、現場で比較的簡単に短時間でコンクリート中の塩分濃度が推定できることが明らかになりました。
本システムは野外におけるコンクリート構造物の劣化状態を調べることを目的とした可搬型コンクリート劣化測定装置です。被検査構造物にドリルで削孔し光ファイバープローブを用い近赤外領域のスペクトルを測定することによってコンクリートの劣化の程度を調べることができます。バッテリー電源により自由に持ち運びが可能で光源、分光器、電源等はひとつの筐体内に収納されます。スペクトル測定及びデータ処理はノートPCで行い、主成分分析により塩分濃度などの知見を得ることができます。
2.システム構成
本システムは以下の各装置及びユニットにより構成されます。
1)ハロゲン光源及び補助光学系
2)測定用光ファイバープローブ(2分岐)
3)近赤外用(1100~2500nm)分光器
4)近赤外用電子冷却検出器
5)直流/交流変換器
6)測定用ソフトウエア
7)データ処理ソフトウエア
8)コントロール用PC
9)バッテリー
10)分光器・バッテリー収納筐体
3.各部の仕様と機能(ブロック図参照)
3.1 ハロゲン光源ユニット
可視領域から近赤外領域まで安定した連続光を提供します。集光光学系により光源からの光をファイバープローブに効率的に導入します。
- 12V、100W
- 明るさ:1250ルーメン
- 色温度:3200K
- 集光光学系により効率よく光ファイバーに導入
3.2 測定用2分岐光ファイバープローブ(添付図参照)
ハロゲン光を試料に照射するためのプローブ、試料からの反射光を分光器に導入するためのプローブとして用います。
- 使用波長領域:900~2500nm
- 全長:2m、2分岐部:約0.5m
- プローブ計測部は約20cmのステンレスカバー付(光ファイバーを保護するため、最先端は3mm程度カバーが外に出る)
- ライトガイド:φ200μmの光ファイバーX156本
- NA:0.2以上
- 光源側、分光器側のコネクター
3.3 近赤外用分光器
- 光学系:ツェルニ・ターナマウント
- 焦点距離:100mm
- 開口数:F/
- 回折格子:1200本/mm
- 入射スリット:10μm~3mmマイクロメータで可変
- 出射口:アレイ検出器取り付け可能。
- 分解能:入射スリット幅10μmで○○(回折格子1200本/mm使用時)
- 逆線分散:8.5nm/mm(回折格子1200本/mm使用時)
- 測定範囲:1インチのアレイを使用したとき、216nmの領域を一度に測定可、512チャンネルのアレイであれば1アレイ当り0.42nmに相当。
- 走査波長範囲:1200~2400nm
- 駆動:回折格子軸にパルスモータを直結
3.4 近赤外用電子冷却検出器(浜松ホトニクス社製)
- InGaAsリニアイメージセンサー
1)浜松ホトニクス、型式G9208-256W
2)感度波長範囲:0.9~2.55μm(-20℃)
3)画素数:256(有効画素数:>244)
4)画素サイズ:50μm(H)X 250μm(V)
5)画素ピッチ:50μm
6)有効受光領域:12.8(H)X0.25mm(V)
7)暗電流(25℃):Typ500pA、Max2000pA - マルチチャンネル検出器ヘッド
1)浜松ホトニクス、型式C-8062-01
2)寸法:100X90X99mm(詳細は浜ホトHP参照)
3)制御温度:-20℃±0.1℃(固定) - マルチチャンネル検出器ヘッド用コントローラ
1)浜松ホトニクス、型式C7557-01
2)インターフェース:-01がUSB対応
3)データ測定制御(露光時間、データ転送、外部同期信号入力、アンプゲイン設定、冷却制御等々)
4)電源:AC100~240V±10%
5)消費電力:最大33W
6)外形寸法:92(W)X150(H)X225.8mm(D)
7)重量:約2.9kg
8)付属ソフトウエア:
・露光時間設定
・アンプゲイン設定
・積算回数設定
・冷却制御(ON/OFF)
・ダーク補正
・計測開始・終了
・計測データの種類設定
3.5 測定用ソフトウエア
1)所望の波長領域を測定するために分光器を駆動
2)アレイ検出器を制御し、信号をPCに読み込む
3)スペクトルを表示する
測定したい領域はコンクリートの中性化を調べるために1、350~1、550nm及び塩化物イオンを調べるために2150~2350nmの領域
3.6 データ処理ソフトウエア
1)塩分既知濃度の測定スペクトルから多変量解析を行い検量線を作成します。
2)未知濃度の測定スペクトルから塩分濃度を求めます。
3)深さ方向などの横軸に対して塩分濃度のプロファイルを作成します。
3.7 制御及びデータ処理用PC
省電力ノートPC
3.8 直流/交流変換器
12V直流バッテリーを電源とし、光源、分光器駆動、検出器、PC駆動の交流電源を得る
3.9 バッテリー
1)リチウムイオン電池
2)23V
2)15Ah
3)4.2kg
3.10 収納筐体
分光器・光源・バッテリー等を収納する筐体
※計測側の光ファイバーケーブルは、光源・分光器側の両方がミックスされた状態で配置されます。
1.測定手順
動作確認:計測装置は現場ではなく実験室でフィルター及びOHを含むガラスでシステム全体の動作確認を行ってから現場に輸送する。現場での測定手順は以下の通り。
現場での作業は、ドリルで穴をあける作業員、スペクトルを測定する作業員など4人程度で次から次に測定していく。
①被検査部の決定
②すべての装置の電源をON(発電機、計測装置、PC等)
③白板と被検査部のスペクトル測定
④ドリルで深さL1mmまで穿孔
⑤L1mm部のスペクトル測定を20~30回行う。
⑥ドリルで深さL2mmまで穿孔
⑦L2mm部のスペクトル測定を20~30回行う。
⑧ドリルで深さL3mmまで穿孔
................
⑨ドリルで深さLnmmまで穿孔、測定を20~30回行う。
⑩終了
2.上記の手順に基づいて測定プログラムは以下の流れとなる。
解析と測定のプログラムの中で「測定」を選択
1)測定条件の入力(露光時間、積算回数、冷却温度、波長軸校正、中心波長λ1,λ2...λ10のセット、深さLでの測定回数を入力:1~99)
2)ファイル名「abc」を入力
3)標準白板のスペクトル測定を中心波長λ1と中心波長λ2で行うと同時に強度スペクトルを表示する。確認後次に進む。
4)表面部(L0mm)のスペクトル測定を中心波長λ1で行う。強度スペクトルを表示、確認後次に進む。やり直し可能
5)表面部のスペクトル測定を中心波長λ2で行う。強度スペクトルを表示、確認後次に進む。やり直し可能
6)ドリルで深さL1mmまで穿孔後、場所001において中心波長λ1スペクトル測定。スペクトルは「光強度スペクトル」と「反射(吸光度)スペクトル:log(λ1L1001/白板λ1)」の両者をリアルタイムで繰り返し表示する。所望のスペクトルが得られたら「保存」する。
7)中心波長が自動的にλ2に移動し(回折格子が回転し)、同じ測定を行う。スペクトルは「光強度スペクトル」と「反射(吸光度)スペクトル:log(λ2L1001/白板λ2)」の両者を表示する。スペクトルを確認し、次に進む。
8)「プローブの位置を変えてください」のメッセージが出たら、プローブの測定位置を移動し、「OK」を入力する。
9)深さL1場所002で001と同じ測定を行う。上段にスペクトル強度、下段に吸光度スペクトルを表示し、横軸は中心波長λ1とλ2のスペクトルを同じ図の中に表示する。従ってλ1とλ2が離れている場合はその間にスペクトルがない領域が存在する。
10)粗骨材部(2.21及び2.35μmのピークで判断)の測定を行った場合は場所を変えて再測定するかどうか。粗骨材の判断をここで行うかどうかは検討する。→現場では粗骨材部かどうかの判断は行わない。
11)ドリルで深さL2mmまで穿孔後、中心波長λ1、λ2でスペクトル測定
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12)ドリルで深さLnmmまで穿孔後、中心波長λ1、λ2でスペクトル測定
13)終了
この段階でファイル名「abc」で標準白板、深さL1~Lnのそれぞれλ1,λ2の中心波長、測定場所001~m、合計(1+m・n)x2個の光強度スペクトルと2mn個の反射(吸光度)スペクトルを測定したことになる。
3.この後、解析プログラムを立ち上げ、スペクトルの解析を開始する。データはいろんな解析ができるようにエクセルベースで保存する。
1)検量線の作成
2)不採用データの決定
3)同じ深さのデータの平均化スペクトル
4)塩分濃度の計算・出力